先日、三浦市長の吉田氏と会食した。先月号でもお伝えしたが、現在、当社では、三浦市認定事業「三崎下町&城ヶ島活性化プロジェクト」を推進する為、いろいろと動いており、既に記者発表も行われ、いよいよ本格スタートである。
ただ、実際、かような事業というのは得てして上手くいくのは少なく、途中で頓挫してしまうのが落ちであるが、私自身、投資家であり事業家である。従来の行政に頼り切った方式とは違って、私自身が、新たなビジネスモデルに取り組むのと同時に、本事業に投資するのであって、主従関係は、主な事業はあくまでも不動産事業であり、このプロジェクトは従的な事業であると考えている。
最近、巷では「不動産投資」について、様々なノウハウ本が出版されているが、私としては「不動産投資」とは一番簡単な事業であり、然程のノウハウがあるものとは考えていない。投資物件の選定と運営するノウハウとが合致すれば、概ね失敗などしないのに相変わらず失敗する人の数が増えているのは、基本的な概念を理解しないままリスクの高い物件を「利益」とみて投資するからである。我々、プロから見れば、明らかに最初から投資に不向きな物件を購入してしまう。それらのひとの多くは、自らが選んで読んだ出版物から得た、割と浅はかな知識を基準に多額な投資をしてしまうのである。現在では、その著者自体が素人であったりするから悲惨なものであるし、無責任な結果である。
私自身は、その事業がわからないひとは、投資するべきではないと考えている。
私自身、この不動産投資にしても、自らがリスクを背負って投資してきており、事業のノウハウを構築してきた訳だが、結局、他の事業と比べれば、数段、簡単なものである。従って前職のサラリーマン時代に、現在の個人として大半な資産を構築することが出来た訳だがその後、起業してきた他の事業は、サラリーマン時代にはできようがないものである。
現在、事業家として行っているCFネッツでは不動産コンサルタント事業であり、当然だが素人が出来る事業ではないし、CFビルマネジメントは、プロパティマネジメント事業であり、当たり前だが素人に出来る事業ではない。また、南青山建築工房では、建築やリフォームなどだけでなく、塗料、コーティング材、床暖房などの素材開発を手がけており、当然、これらも、素人の領域ではないし、月極倶楽部などは、最近、ウイークリーマンスリーマンションだけではなくビジネスホテルなども手がけており、この稼働率を維持する業務も簡単なものではない。よく、短絡的な思考の方から、では不動産投資だけやっていれば良いのではないかと馬鹿げた質問を受けたりするが、不動産投資だけで事業など成り立たない。不動産投資で生計を成り立たせることは可能であるが、それを事業として行えるレベルになるには相応な時間と莫大な費用が掛かってしまうのである。
私は、そもそも事業家を目指して生きてきた訳で、その志半ばでサラリーマン生活を強いられたことで不動産投資を行っていた。そのお陰で、11年前、事業家として復帰したけれども、投資家の立場も維持している。輸出業から不動産業に転身し、いまは不動産が好きだから、事業家としても投資家としても不動産に拘わってきている。
今回、三浦市の三崎下町&城ヶ島活性化プロジェクトというのは、三浦市の不動産活性化プロジェクトでもある。つまり特定の地域に投資し、事業を起こし、そこで収益構造を作り上げてゆく。その際、一番の問題は、地域社会と行政との取り組みである。この三崎地域は、過去において遠洋漁業の基地的な役割を果たしてきたが、現在では、遠洋漁業の形態が変わり、船の数も約十分の一に落ち込んできている。さらに景気後退の影響から物価は下がり続けているから、既に過去のビジネスモデルは通用しない。また、全国的に稀である三毛作を誇る農業においても、市場価格の下落から厳しいものとなってきている。三浦市の土地の約75%は上記の農業と漁業の用地であり、建物などの建築は出来ない。過去に、一次産業で栄えた地域のしがらみを残したまま、地価も下落の一途を辿る街。
しかしながら、私の目には、とてつもない可能性を秘めた街に見えるのである。それは、まず、一次産業以外の25%の土地の希少性である。広大な土地に対して、住宅等の土地はたったの25%。環境を保全された優良な土地であり、京浜急行の「三崎口」から「品川」まで、1時間10分。国際化が進む「羽田空港」までは、約1時間程度の都心から近い地域に位置する。更に房総半島と伊豆半島に挟まれた小さな半島がゆえに温暖。三浦半島の最南端には、城ヶ島があり、地盤は、ほぼ岩盤のまま。関東大震災時には、この城ヶ島が防波堤の役目を果たして、津波などの被災は全くなかった。また、先に書いたとおり、ここは一次産業の街であり、海産物と農産物は豊富。食物と空気は、至って健康的な街である。
つまり、かつて、一次産業中心の街は、現在に至っては住宅地として最適な街なのである。既に三戸浜地域は、芸能人の多くが別荘を保有しているし、下町には都心部から移住してきている人が増えている。私としては今回のプロジェクトは住宅的確地である価値を、どのように作り上げてゆくかという視点で考えており、それらに必要なインフラを整えてゆくようにすれば、とてつもない価値の増加が認められるようになると思っているのである。
地域の活性と付加価値の創造が、地価の増加に繋がる。これらの発想は欧米では常識なのであるが、いまだ日本では認識されていない。土地に建物を建てるだけの事業では、根本的な付加価値は創造できない。その地域に、どのような目的とテーマを持たせ、それに向って、どのように付加価値を創造してゆくのか。
今回のプロジェクトで、私なりの実験を行ってゆきたいと考えている。
そして、そのノウハウは、新たな不動産業のあり方の提案に結びついて行くのである。
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