アルカリ温泉水が決め手「手打蕎麦 葉山商店」独占インタビュー

【店舗情報】
店名:手打蕎麦 葉山商店
住所:〒238-0243 神奈川県三浦市三崎3-2-22
営業時間:平日 11:30~15:00・17:00~21:00
定休日:不定休
お店の公式HP

古民家でいただく手打ち蕎麦

店舗には「漁船 船具 株式会社葉山商店」の看板。その名の通り、元々は三崎港に出入りしていたマグロ漁船の船具を販売していた店舗らしい。古商家と呼ぶのにふさわしく、この建物は築140年を超えている。なんと明治時代初期の建築で、内装や建具は当時のままの雰囲気を残すため、他の古民家を解体して部材を調達して完成させたという。この趣のある空間は、ノスタルジックな雰囲気で、建築物が好きな小生にはたまらず、凄い!の一言に尽きる。

外観

外観

左:製麺所 右:店内

港にある手打蕎麦屋、その理由とは?

三浦野菜と地魚の天ぷら

三浦野菜と地魚の天ぷら

三崎港で、手打蕎麦。若干、違和感をもつ人もいるかもしれないが、入って納得した。三浦野菜と三崎港の地魚を、天ぷらでいただく。カウンター席で、揚げたての天ぷらを食べながら、ゆっくり酒をいただけるのである。昔、蕎麦屋というのは、現在の居酒屋のようなものだった。蕎麦前という、蕎麦の前に料理をつまみ、最後に〆で蕎麦を頂くのが江戸っ子流。

蕎麦粉は、毎年、出来の良い所を取り寄せ、蕎麦の水回しは、何と、飯田温泉の湯里湖という温泉源泉水を使い、歯ごたえのある仕上がりになっている。天ぷら蕎麦は、掛け蕎麦の上に天ぷらがのっているのでは、具合が悪い。さらにもり蕎麦、ざる蕎麦だと、もっと具合が悪い。揚げたての天ぷらは、揚げたての天ぷら。手打蕎麦は、打ち立ての蕎麦。いつの時代にか、どんぶりに一緒になって出てくるようになったが、これでは「食」の豊かさが感じられない。

もちろん、気軽に蕎麦を楽しむもよし、昔ながらの蕎麦屋の流儀を味わうもよし。この店には、ノスタルジックな大人の空間が感じられ、この店を知っているだけ「食通」としてのステイタスも得られるというもの。

大型店にはない細かな気配りができる店を目指す

大石 悟店長

大石 悟店主

店長は大石 悟。オープンに合わせて地元の三浦三崎に戻ってきた。神奈川県内の日本料理店で腕を磨き、日本料理の最終章がシンプルな日本蕎麦、どうしても蕎麦屋がやりたいということで、この店に就いたのである。

大石「以前から、ゆくゆくは地元に帰って自分の店をもちたいと思っていました。ここに来たきっかけは、オーナーがラジオに出演していて、その番組で店長の募集の話をしており、いてもたってもいられなくなって応募しました。
前に仕事をしていた日本料理店は大型店でしたので、お客様の個別なニーズに対応ができませんでした。この店ではメニューも含めてお客様の様々な要望に応えられるように努力しています」

和を感じさせる調度品と、余裕のある店内

巨大な桜の絵画が目を引く店内

巨大な桜の絵画が目を引く店内

店内はカウンター席とテーブル席を合わせて10人分程度。入って驚かせられるのが、巨大な桜の絵画が飾られている。そして小上がり座敷は余裕のあるテーブルが2卓、家族連れものんびりと過ごせるし、18人までの宴会も可能だ。

純和風の襖や障子が目を引き、さらに調度品にもこだわりを感じる。また座敷のコーナーにはレトロなサイドボードが置かれており、ここには常連客のボトルがキープされており、一つ一つの風景にも、こだわりを感じる仕上がりだ。当然、料理にもこだわりがあるのである。

地元産と季節感を重視した素材選び

地元産の素材を意識した天ぷら

地元産の素材を意識した天ぷら

大石「仕入れはほぼ自分で行っています。素材の買い付けの着眼点は、まずは季節感を重視します。もちろん地元・三浦で採れたもの。三浦は三崎港で水揚げされる〝三崎マグロ〟が有名ですが、近海の魚や野菜の宝庫でもあります。

紫蘇とキノコ以外は、メニューに使用できる野菜は地元産にこだわります。メニューのメインは蕎麦と天ぷらですので、天ぷらに合いそうな地元産を中心に仕入れています。また蕎麦は、その年に採れたそば粉の中から厳選したものを使用し、水は信州の天然アルカリ温泉水湯里湖を使用しています。当店に来るお客様は食通の方が多く、普段食べている蕎麦やてんぷらでは満足して頂けませんので、日々、努力して料理を作っています」

温泉水を使用することで他店の蕎麦と差別化を

アルカリ温泉水を使用した手打蕎麦

アルカリ温泉水を使用した手打蕎麦

「現在、蕎麦粉は福井県産。各地域産の蕎麦を食べ比べてみた上で、今年は福井県産に決めました。香りが良く、蕎麦独特の甘みも優れています。蕎麦打ちは、毎日、店頭で行っています。どんなに忙しくても当店では手打ちに拘り、丹精込めてお客様に提供しています。そしてまわし水は長野県の南信州・飯田温泉の源泉を冷やして使用しています。

これも単純な温泉水ではなく蕎麦になじむアルカリ温泉水です。温泉の香りはしませんが、蕎麦粉は水に馴染みにくく、割合を高くすると独特のぼそぼそ感が出てきたり、歯ごたえが良くできませんが、この温泉水を使用することで妙な繋ぎを入れる必要が無くなります。」

マグロに負けない三浦野菜の魅力

三浦野菜を使用したメニュー

三浦野菜を使用したメニュー

凄いこだわりの店だ。かといって、普通に鴨南蛮やセットメニューも用意されており、金額もリーズナブルである。一般的に、三崎=マグロのイメージがあるが、三浦野菜も持ち上げたいと感じた。

小生、カウンターに座っててんぷらをつまんで、遊鯉という純米冷酒をいただいていると、隣の初老の夫婦がお刺身をつまんでいた。聞けば、隣の三崎港蔵から出前ができるという。なるほど、蕎麦前のつまみは幅広く、刺身と揚げたてのてんぷらなどを肴に酒を飲み、ほろ酔い気分になったところで〆の蕎麦。

香り高い蕎麦湯でいただく絶品そばつゆ

ざる蕎麦とそばつゆ

ざる蕎麦とそばつゆ

極楽。〆のざる蕎麦で満足した後に、出てきたのが蕎麦湯。こいつでそばつゆを割って頂くのだが、蕎麦湯に含まれている蕎麦の実の香りがたまらない。こんなところにも、気配りが。

「葉山商店」でしか食べれない蕎麦を目指す!

大石 悟店主

大石 悟店主

「蕎麦屋といっても、いろいろあると思います。私自身、大の蕎麦好きで日本全国にそばを食べに行きました。私が目指しているのは、遠方からも、三崎というよりも『葉山商店』で食事をしたいという目的で来ていただける、そんな店にしていきたいと考えています」

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