地方後退、大都市中心部へ集中
8月に、国税庁より、相続税と贈与税の算定基準となる路線価が公表された。面白いことに、この路線価が、賃貸住宅市場の地域性を如実に表わしている。地価と市況の違いを除けば、概ね「全体に低迷(下落傾向続く)しながらも、地方と大都市で二極化が進んでいる」のである。公表された路線価をみると、全国平均額(住宅地・商業地・工業地約41万地点)は前年度に比べ5・0%下がり、これで12年連続の下降(低迷!)となっている。とくに地方都市の下落率が目立ち、秋田、甲府など5都市では20%以上の下落(衰退)を示し、地方圏全体でも7・7%から8・2%へと、さらに拡大した。一方、大都市圏の下落率は、東京圏が前年度の4・0%から2・7%に、大阪圏が8・7%から7・7%、名古屋圏は6・5%から6・0%へと縮小し、逆に、調査地点単位では、大都市の中心部である東京・丸の内の新装丸ビル地点で5%上昇(浮揚)したほか、名古屋や福岡の中心部でも上昇を示しているのである。つまり、地方圏と大都市圏(正確には地点)とで極端なニ極化現象が進んでいるのだ。この現象は、賃貸住宅市場でも顕著にみられる。たしかに、土地の価格と不動産市場とは切っても切れない関係ではあるが、今日の賃貸住宅市場における二極化現象は、これまでのものとは異なり複雑で、東京圏内の中堅都市でも路線価が下がり、一層低迷感が色濃くなっているところも出てきている。
私は、講演やコンサルティングの依頼を受け、日本全国の地方都市へよく出向くが、今、地元のアパートオーナーや不動産業者の方からは「半分は空いてますよ」「これじゃあ、アパートを建てるのはリスクが大きい」等々、またこの間、山梨のある企業の支店に電話をしたら東京本社に転送され「甲府の支店は雇用削減で撤退しました」との返事、そんな支店経済の厳しい声ばかりを聞く。私の実感としても、地方圏の賃貸住宅の稼動率は70%ぐらいではないかとみている。その理由を一口に言えば、長引く景気低迷による支店経済の破綻、ならびに地方に本社を置く企業の東京都心への移転、つまり、地方圏における就労人口の急激な減少である。そこには、インターネットビジネスが浸透し、営業部門を東京本社に集中させても支障をきたさないという技術的な背景もあるが、やはり、都心に、地方からの集まる就労者を受け入れるハコがあるということだ。路線価で5%の上昇を示した丸の内地区をはじめ汐留、六本木、品川地区など、これからも巨大な床面積を抱えた高層ビルの建設ラッシュが続くのである。「安い賃料で都心に本社が構えられる」となれば、地方撤退、本社の都心集中は今後も避けられそうもない。
当社の本社がある横浜市は企業誘致に積極的で、マスコミで周知のとおり、日産自動車本社が銀座から横浜市内のみなとみらい地区に移転することになったが、それで約3000人の就労人口の増加がみこまれている。当然、住宅ニーズも高まるわけである。その反面、私が地方から横浜に戻り、セミナーなどを開いて「東京や横浜はマシな方ですよ」と話しているものの、同じ神奈川県内の一部の地域では支店閉鎖現象が軒並み起こり、深刻な経済市況になりつつある。これは関東一円の中堅都市にいえることであるが、そこにあった支社、支店が東京本社に営業部門(支店地域には物流部門を残すだけで)を集中することで、これらの中堅都市の就労人口が減少しているのだ。ちなみに、トヨタ城下町である豊田市周辺地域やホンダのある静岡など巨大企業がある地方都市は安定しているが、全国的には稀のようだ。
この就労人口の地方から都心(横浜中心)への流れによって、賃貸住宅環境は大きく変わるのだ。通勤時間1時間半が当たり前だったバブル期とは打って変わり、土地の有効利用だから,相続対策だからとハウスメーカーに言われるままに、「土地があるからアパートを建てる」時代ではなくなったのだ。
少子高齢化で、絶対ニーズ減少
<図>のような人口動態ピラミッド(2000年調査)をみると、一番高い山となっている55歳前後の団塊世代(男女各約120万人)をピークに少子高齢化が進んでいることがわかる。その子供たちである団塊ジュニア(男女各約100万人)と言われる人たちは現在30歳前後。彼らは、親たちが貧しい時代に育ち、消費に憧れ、バルブ期に一番お金を使った消費時代の代表世代であるのに反し、家があり、車やテレビなど物に恵まれた豊かな時代に育ち、消費を自分に必要なものにしかしない世代である。換言すれば、環境的に景気を良くさせない世代である。また、親たちはリストラ等の雇用不安でお金を使えなくなり、その子供たちが、団塊ジュニアのジュニアとして一塊になるには、あと30年ぐらいは要する。となると、人口的なニーズから景気を浮揚する要因は期待できない。これから先は、人の絶対数が少なく、景気も良くならず人の移動も少なく、当然ながら、賃貸住宅への絶対ニーズは減少一途と考えた方がいいということになる。
分譲移行で借家率、将来3割!?
私が不動産業界に入った20年前は、借家率60%に対し、持ち家率40%だった。それが、今年3月発表されものをみると、借家率40%、持ち家60%と逆転している。借家率が60%から40%と、20ポイント下がるということは、実際の賃貸住宅世帯では33%減っていることになる。今後どうなるかといえば、現在の借家率40%のうち、10%の世帯は実家に戻る人だったり、サラリーマンの転勤組みだったりして、実質的な賃貸派(分譲を買えない人含め)と言われている人たちは30%位ではないか。要するに、さらに分譲移行が進み、借家率はまだまだ下降線を辿るとみている。バブル期には、一般の分譲価格が所得の10倍近くまでハネ上がるなどの理由で、持ち家を諦め、公然と賃貸派を自称していた人が増加していた。だが、バブル崩壊後から今日までの分譲市場をみると、価格破壊競争に走り、低価格へ低価格へと向い(大都市一部では安定してきたが)、加えて、ここ数年来の国の低金利政策がフォローとなり、潜在的持ち家派が台頭して「賃貸より分譲を買ったほうがトク」と、賃貸派に属していた人が分譲住宅を購入するようになってきた。賃貸から分譲という傾向も幾分落ち着いてきたものの、これからも分譲市場が賃貸住宅市場に大きな影響を及ぼすことに変わりがない。
発想の転換で土地有効利用を
賃貸住宅経営は、もっとも人気がある土地有効利用策ではあるが、今日、前述したように「土地があるからアパートを建てる」という発想を変えざるを得なくなった。ハウスメーカーに言われるままではなく、「もっと投資効率がいい」土地の利用、賃貸住宅のあり様を自ら考えなければならなくなったのである。たしかに、銀行から借入して、自分の土地にアパートを建てるだけで、負債の増加、土地の評価減につながり、一応の相続対策にはなる。しかし、それはアパート運営がそこそこにうまく行っていればの話である。その建てたアパートが空室だらけで、利子を持ち出しするようなる可能性も多いに起こりうるのだ。本来、アパート経営は事業であり、そこから上がる収益を考えなければならないもの。オーナーは、相続対策を契機として、アパート経営を始めたとしても、賃料収益をよって相続税を払う、事業家精神、そして努力が求められる。
ここに現金1,000万円あるとする。これを銀行に普通預金で10年間預けておくと、10年後に約2万円の利息だ。それを、経済成長並の3%で運用すれば、344万円の運用益が産まれ、ましてや、多少リスクを伴うが、利回り8%の不動産投資で運用すれば、1,158万円の運用益がでる。2万円と1,158万円、これほど大きな差がでるのに、地主さんなどの資産家という人たちは意外に不思議がらないのである。土地にしても同じことが言えて、先祖代々の土地だからといって、資産を眠らせて置くことになんの疑問を抱かない。相続問題が身近になるとか、第三者に土地有効活用などを提案されてから、ようやく、自分の資産のあり方を考える人が多い。また、提案されても、前述ようにハウスメーカーに言われるままに対応する。土地という資産背景に事業家精神を持てば、少なくとも不動産投資の基本的な知識があれば、この土地にはどういった建物を建てたら投資効率が高くなるのか、それとも、他の投資向きの土地と交換した方が有利ではないかなど、自ら考える余地が出てくるはずである。
特定の所しか‘決まらない’
以前、知り合いの地主さんから「アパートを建てたいから、どんなものが良いか企画してほしい」と頼まれ、10枚ほど図面を作ってみたことがあった。しかし、周辺の市場調査をしてみたら、どうしても集客に自信がなく、その地主さんに「場所的に、ここに賃貸住宅はムリですよ」と断った。すでに図面を作り、建物が建てば管理の仕事も増えるのに、私の会社にとっては、マイナスであったが、コンサルタントの立場からそう結論付けたのだ。その地主さんは「では、どうしたら良いか?」と聞いてきたので、私は「売却し、買い換え特例を使い、他のイイ場所を買いましょう」とアドバイスをした。結局,その土地はゼネコンやデベロッパーなど6社の競争入札にし、その結果、2億8,000万円の評価だった土地を3億8,000万円で売り抜けることができた。買い手は、上場したばかりのデベロッパーで、そうした企業は、つねに土地を買って建物を建てつづけなければならないので、高く売れたのである。
また、大道路から奥まった、ガソリンスタンドの裏手にある土地のオーナーから、賃貸住宅の企画設計を依頼されたことがあった。しかし、周辺のアパートや賃貸マンションは空室率が高く、賃貸住宅はリスクがあるので、他の有効活用を考えたほうが良い、とオーナーにアドバイスした。そして、結果的には苦肉の策で、その土地に900万円投資することにし、建物を建て、リスクを回避させるために大手の弁当屋サンに700万円の保証金を出させて月額35万円で貸し出すことになった。その建物の敷地には車10台以上停まれるスペースがあるので、大道路を通行する車を弁当屋さんに引き寄せるために、GSの屋根の上に、その大手弁当屋では日本一大きな看板をつけさせてもらった。オーナーにとっては、‘賃貸住宅’から‘弁当屋’に変わって、戸惑いがあったかと思うが、これが土地有効活用の逆転の発想である。
話は変わるが、現在、日本銀行が一般銀行へ貸し付ける融資量が過剰気味、国債の発行高も約700兆円に膨らみ、ハイパーインフレ(供給過多)といってもおかしくない状態で、市中に出まわるお金(マネーサプライ)も増えつづけている。ところが、実際の日本経済は、円高等の影響で物価は低水準で推移し、目下、デフレ対策が注目されている。賃料低下もデフレ経済下では仕方ない気もするが、その一面、設備資材のように、一時期より2割近く上がっているものもあることも見逃せない。私は、いずれ、ハイパーインフレとコストプッシュインフレが表立って、近い時期にインフレ経済に転じるとみている。そうなれば、当然、賃料も上昇することになる。ちなみに、円だけではなく、米ドル、ヨーロッパのユーロ、中国の元といった世界経済を引っ張るお金は増えつづけている。
とにかく、今は、賃貸住宅市場をとりまく環境は厳しく、相続対策のための土地有効利用といって、アパートや賃貸マンションを建てるにしても、@特定の所しか、入居者が決まらない。A地方圏では難しく、また東京圏でも、資産をシフトする気持ちで立地条件のよい場所を探すこと。B後述するが、物件の目的・テーマを考え、意味のある建物を建てるようにすることである。
これからはDCF(discounted cash flow)で土地評価
前述した通り、地主さんという資産家は、資産運用に無頓着で、不動産投資に積極的な人は少ない。8%の利回りで運用すれば、資産が大きく膨らむことを知らない、あるいはリスクを恐れて信じない人が多い。
土地の場合、ここに更地価格1億円の土地があるとする。これを何もしないで更地のまま放っておいて置くことは、DCF評価では価値ゼロなのである。10年後に地価が上がるか下がるかは分らないものの、さきほどの経済成長並の3%で運用すれば1億3,440万円になる。不動産投資の8%で運用できれば、それこそ倍以上に資産が拡大するのである。では、どのように1億円の土地を運用するかであるが、一般的には建物を建てて収益を得ることになる。その時に、DCF評価が出てくる。その土地に10戸の賃貸マンションを建てたら、5年後にはどのくらい収益を産むのか、6年後は、7年後は、と土地診断するのである。
DCF評価とともに、土地有効活用で大事なことは、R(キャップレート=資本投下利回り率)である。その土地の価値Vは、I(諸経費を差し引いた収益)をRで割って出てくる。たとえば、銀行評価が1億円であっても、その土地にアパートを建て、そこから上がるI(収益)が1,000万円でRが6%とすると、Vは1億6,600万円。仮に、Rが12%ならば、8,800万円と、1億円以下の評価だ。つまり、1億円の土地に1億円を投資して、アパートを建設し、家賃収入が1,200万円だとすると、建物に対する利回りは12%だが、その下の土地を含めると、6パーセントしかならない。Rを10%とすると、1,200万円割る10%で1億2,000万円となり、8,000万円の価値が低くなる。すなわち、Rが低いほど土地の価値が高くなる。地方では、Rが高いほど好まれるが、実際はRが高いほどリスクが高いのである。だから、東京など大都市では、Rの低いほど好まれるのである。
少し余談になるが、個人的に、競売にかけられる土地の売買話が舞い込んできたことがあった。固定資産税を払わなかったために、自治体に強制収用された物件で、最終的には2,000万円の評価する土地を1,200万円で購入することができたが、土地などの不動産は、私有物になりきれないものだとつくづく感じた。それまでは、土地を買うために金融機関から借り入れたお金をすべて返済すれば、完全に自分の私有物になるものと考えていたから、このように、税金を払わなければ、すぐに国や地方自治体のものなってしまうと思うと、土地に対する考え方も変わってしまった。
自分の足で物件見る目を肥やせ
賃貸住宅市場は借手市場に加え、マーケットの二極化、そして絶対ニーズの減少傾向が進み、お客様(入居者)の取り合いといっていい今日、一体、どんな物件なら集客力があるのか。まず言えることは、今までと違い、オーナー自身が、お客様の目となって、色々な物件を見て回り、自分が借りたくなるようなものを供給することである。実際、多くの家主さんは自分の物件を知らなすぎる。1度建てたら、建てっぱなしで、あとは管理会社に任せっきり、これから建てるにしてもハウスメーカーや業者に全面的に依存してしまうといった、ほとんどが他人任せである。
こんなことがあった。築30年経つアパート(20戸)のオーナーが来社し、「8室空いたままなので、なんとかしてください。もう借金はなくっていいんだが、空いていると、世間的にみっともなく、防犯上の問題もあるし」と相談にやってきた。私は、そのアパート付近の物件情報を15,6件ほど集め、そのオーナーと一緒に最寄駅から物件地まで順に「ここの物件は、築何年、家賃○○円で空室×件」等々、情報と照らし合わせながら見て回った。それから、オーナーが所有する物件と比較することにした。そして、空室の一室に入ってみると、オーナーは開口一番「キタナイね」と、他人事のような言葉を発した。内装は所々クロスを張り替えているものの、壁、床ともに汚いままで余計そのギャップがひどかった。それから、もっと驚かされたことは、風呂が30年前の旧式で狭く、またガス器具が自分で点火するもの、私は思わず「これじゃあ、今の若い人は嫌がりますよ」と口に出してしまったほどだ。そのアパートはすべて2DKで、家賃は相場の8万円より15%安く68,000円だった。私は、オーナーに提言して、内装をペンキで塗り替えるなどし、風呂も当たり前の自動式のものに替え、家賃もさらに3,000円安く65,000円にさせた。案の定、1ヶ月ほどで、空いていた8室すべてが埋まった。相場的には当然だ。つまり、いくら古い建物でも、マーケットを絞り込み、家賃を押さえ、@キレイA利便性B防犯の三つを抑えておけば、集客できるものである。それを見極めるためには、まず自分の物件と周辺の物件とを見比べることである。
トラブル防止は‘契約書’で
最近、賃貸住宅に関するトラブルが大変多くなっている。というより、以前なら、借主が泣き寝入りしていたものが表面化してきたと言う方が適切だろうが。消費者はトラブルを抱えているような物件(オーナー、業者含み)は敬遠するのは当然だ。当社のホームページ『不動産QアンドA』には、トラブル相談が毎日に3、4件入ってくる。入居者を中心に、オーナーや業者など、内容も原状回復時の敷金返還問題から、入居者の家賃滞納問題、不動産投資に関する問題など幅広い。なぜ、そんなにトラブルが生じるのか、先に結論付ければ、適当な契約書で賃貸借契約を行なっているためである。借主は敷金を返してもらう権利、修繕をしてもらう権利等々、一方、貸主には賃料をもらう権利、入居者の過失による損失に対する損害賠償請求の権利等々、貸し借り双方に債権があり、それらの権利義務を契約書に整然と記されていないからである。契約時に双方が主張できる権利を納得した形で契約書を交わしておけば、揉めることはないはずである。しかし、オーナーに修繕するお金がないとか、入居者がリストラにあって家賃の支払能力がなくなったとかの現実問題が出てくるかもしれないが、やはり、トラブル発生は契約書を主導する、貸し手・業者側の責任であろう。
私が経営者として参画している『不動産体系研究所』は、トラブル防止のための契約書作りを目的として立ち上げ、リクルートを筆頭に、その契約書が徐々に全国に普及してきている。また私が社長を務めるCFネッツでは、社内に家賃滞納者のデータ―ベースを備えるともに、原状回復費などを不当に請求して揉めるオーナーの管理は引き受けない方針を徹底させている。
また、貸し手と借り手の仲介・管理役を担う不動産業者にとり、これまで以上にオーナーの経営体質を重視しなければならなくなった。「短期賃貸借契約の廃止」に関わる業法改正により、消費者の借りた物件が、貸し手の事情で競売にされた場合、敷金返還義務は仲介業者が支払能力のない貸し手に代わり支払う義務が生じるようになった。そのため、仲介業者は、その義務について、入居者への重要事項の説明で知らせなければならなくなった。
いずれにしても、賃貸住宅をとりまく環境はハード面、ソフト面ともに厳しくなってきている。不動産業の先進国、アメリカはどうだろうか。
PART2 先進アメリカの市場環境
世界で注目、CPM(Certified Property Manager)資格
一般的なアメリカの賃貸住宅は、数百戸単位の大規模なもので、日本でみられる分譲住宅の大型団地あるいは1つの街みたいになっている。入居者募集から建物管理・メンテナンスおよび運営まですべて管理会社が一貫して行なっている。管理会社は、オーナーのために空室を出さないように、賃貸住宅全体をコーディネートできるプロパティマネジメントとして、CPM資格者を雇っている。日本では、アメリカのような大規模な賃貸住宅は少なく、CPMのような不動産管理の専門家が育ちにくかったようだ。しかし、10数年前から、米国の不動産管理システムを学ぼうと、日本でもCPM資格取得の動きが起こり、私も2003年4月にCPM資格を(筆記試験では日本で初めて)取得した。現在、この国際的なCPM資格者は世界27ヶ国に8,000人(日本人は10数名)となっている。これから、外資系の会社がファンドで都内の物件を証券化する動きも多くなり、日本でもCPMの存在が注目されるだろう。
米国人は‘サービス’を借りる
アメリカ人と日本人の賃貸住宅に対する考え方には大きな違いがみられる。日本の場合は「分譲住宅を買えない人」が住むイメージ(実際も?)が強い。対して、アメリカ人は、「持ち家になく、賃貸住宅にあるサービス(付加価値)を借りる」というのが一般的な考え方なのだ。彼らは、分譲住宅を買えば(実際、経済力がある人が多い)、メンテナンス、維持管理が大変であり、それより、ホテル並のソフトサービスを受けられる賃貸を求めているのである。日本でいう、純粋な賃貸派であるといえよう。
では、アメリカの賃貸住宅に住んでいると、どんなサービスを受けられるのか。まず一番に挙げられることは、すぐに日常生活に入れるように、キッチンや冷蔵庫を含めた家具一式が付いていること。加え、絵画やソファー、照明器具など借りる人の趣味趣向に合わせて、オプションで取り寄せることができる。そのために管理会社は、インテリアコーディネーターを雇い(2時間)、借り手に対し部屋のコーディネートのアドバイスを提供する。たとえば、日本のモデルハウスをそのまま借りるようなことも可能なのだ。つまり、入居者は、住宅とオプション家具等をセットで「部屋の料金はいくら、家具の料金にはいくら」と、合算した賃料を払い借りるのである。つぎに、建物・敷地内には@スタンドバーなどが付帯されたコミュニティの場(リビング)AプールBテニスコートCスカッシュコートなどが設けられていること。これらの設備は当たり前で、団地によってはゴルフ場施設も備わっている。
アメリカ人は生涯で平均14、5回(日本人の倍)引越するという国民性、そして国土が広く、引越しするにしても、飛行機で2時間以上かかるところもあり、家具を持たない方が合理的なのである。こうしたことから、アメリカのような広い国土で、家具付き賃貸住宅が浸透してきたのだろう。しかし、後述するが、日本でも『家具付き賃貸住宅』はマンスリーマンションとなって全国的に定着してきている。
管理会社はオールマイティ
日本の家主や賃貸業者にとって、もっとも関心があると思われるのが空室対策であろう。しかし、アメリカでは、日本の客付け専門業者は存在しない。つまり、アメリカでは仲介業者は介在しないので、入居者募集(広告宣伝等)は管理会社の仕事の一環となっている。管理会社は、客付けの前に、現在住んでいる入居者に長く住んでもらうように努めていることに注目したい。そのために、設備面のサービスの他、1ヶ月に一回のペースで音楽会などイベントを企画しているのが特長だ。管理会社は1つの物件につき12、3人位の従業員を配置させている。そして、新規入居者募集にあたっては、その団地入り口に、専門の営業スタッフを常駐させ、下見に来たお客さんに十分満足できる案内体制を取っている。その営業スタッフは、物件のロゴマークのついたシャツを着た、その物件に関して生き字引のような人が担当し、お客さんに対し、空いている部屋はもとより、プールの使用方法など団地内の細かいことまで丁寧に説明してあげるのである。大体、その時点で、下見に来たお客さんは契約してしまうと言う話である。
木造でも100年持たせるメンテナンス
アメリカの管理会社の大きな仕事の1つは、建物を長く持たせることである。私は何度も渡米し、賃貸物件を見て回っているが、最初、築103年の歴史あるコットン工場の倉庫を賃貸住宅に転用していたのをみてびっくりしたことがあった。壊さないで、隣のホテルと合体させていた。倉庫のスペースは天井が3メートル以上も高く、かえって吹き抜け型で高級感を出していた。また、その中にプールも設けていたのである。アメリカでは、古い建物をめったに壊さないのだ。私は、木造37年のテラスハウス型の賃貸住宅を見学した時、その管理会社の従業員に対し「この建物はいつ建替えるの?」と質問をぶつけたことがあった。ところが、その従業員はなぜ?って顔をしながら「メンテがオレたちの仕事じゃないか」と応えた。私は、まだ納得できないので、その管理会社の本社で社長に面会した際、同じ質問をした。300坪はあると思える社長室は高層ビルの上階にあり、「ちょっと、こっちへきて下を見てご覧!」とその社長は、私を窓際へ引き寄せると、「あの建物も、その向こうの建物も100年以上経っているんだよ」と教えてくれた。そして、建物を長くも持たせることは、解体費用のロスも出ないし、(オーナーにとっても管理会社にとっても)利益をあげることだと説明してくれた。そのために、収支計画と合わせ、修繕計画を立て、修繕費を積立て、定期的に手を加えているという。その説明で、私は十分納得するとともに、日本でもその考えが浸透していくと確信したわけである。
ところで、年収300万円ほどの欧米人でも豊かな暮らしを味わえるのは、住宅、つまり建物を長く持たせることに大きな理由があるようだ。もし、日本ならば、35歳の時に25年のローンを組み、木造1戸建ての住宅を購入したとしても、耐用年数から、60歳になった25年後位には建替え、もしくは大掛かりなリフォームを余儀なくさせられる。せっかくローンが完済してもまた新たな借金を作らなければならない。つまり、家を持っても一生借金生活から抜け出せないのである。
PART3 米国ノウハウ、日本に上陸
個人的な土地有効利用から企画化された、小規模な賃貸住宅が主流の日本で、アメリカ式のサービス精神は浸透していくのか。
12戸アパートに共用スペース
以前、農業を営む地主さんの依頼で、アパート12戸規模を企画設計した時、数坪ほどのデッドスペースができた。地価が高く土地本位の日本では、そこから少しでも収益が上がるように、すぐに駐車場スペースにと考えがちになるが、私は入居者のコミュニティの場として、夏には子供用のプールを置いて遊べたり、入居者が自由に使える共用スペースとした。これが入居者確保につながったケースだ。
家主であるその地主さんは、自分の畑でシイタケやネギ、ジャガイモ、サツマイモなどの野菜栽培をしていて、収穫期にはそれを入居者一軒一軒に無料で配っていた。そのことが契機となり、入居者の一人がリーダーシップをとり「せっかくだから、みんなで‘芋煮会’でもやろうよ」ということに発展し、そのわずかな共用スペースが入居者の定期的なコミュニティの場になったという経緯である。そして、いつのまにか、退去することになった若夫婦の奥さんは「ここを離れたくない」と泣いていたほど親密感ができ上がっていた。アメリカ式のちょっとしたサービスであったが、予想外に好評で入居者同士のつながりができ、長く住んでもらえるようになったのである。
ゴミ捨て自由、駐車2台分無料
これは岐阜での話。セミナーの講演後、聴講者の一人が「先生、ちょっと、うちに寄ってくださいよ」と声をかけてきた。私は、内心「これは空室で困っているな」と思いながら、その人の車に乗った。行く先は中心街から40分以上かかった山の中に、目的のアパート(5棟)が建っていた。近くには民家のほかにショッピングセンターが一軒あるだけ。しかし、そのアパート50戸(1棟10戸)はすべて満室だと聞かされて驚かされた。ハウスメーカーが建てた、なんの特長のないフツウのアパートだったが、ただ外観がキレイで、敷地内にはゴミがまったく落ちていなかった。私は、「キレイですね、新築なんですか」と質問したところ、10年前から1棟ずつ建ててきたという。私は、満室の理由を尋ねたところ、その家主さんは、3つの理由を明かしてくれた。
1つは、毎日、荷台に放水装置を設けた軽トラックでアパートにきて、朝から晩まで外壁を洗ってキレイにしていること。2つ目は、ゴミは分別しないで、いつ捨ててもOKということ。「私が毎日分別して出すようにしている」と家主さん。3つ目は、駐車場2台分を無料で提供していること。ここまで来ると、切り口はアメリカ式だが、それ以上で、サービス過多のような気がするが、「10年前、10戸のアパート経営を始めたとき、入居者が全然集まらなくて、なにか、差別化できるものはと考えた結果、ここの地域住民のポイントはゴミの分別だった」という。そして、そこからサービスが広がってきたのだ。それにしても、毎日、建物からゴミまでキレイにするのは大変な作業である。が、その家主さんは「先生、百姓をしたことがありますか?百姓はこんなものではありません、もっと厳しい。これくらいでアパート経営ができてありがたいですよ」と、話してくれた。ちなみに、その家主さんは現在45歳か46歳である。
病院とタイアップサービス
物件の付加価値(サービス)づくり、差別化にもいろいろある。これは、新潟で5年前、私が講演で話した「病院とタイアップで入居者確保」のことを聴いた業者さんが、さっそく実践して成功したという事例である。私は前々から、社会保険の破綻危機で病院経営が悪化すると述べていた。一例が、入院日数で、これまでは社会保険を使う場合、60日経ったら、1度出なくてはならなかったが、それが45日、いずれ30日と短縮されてくると予測していた。病気が完治したなら問題はないが、1度退院した患者さんは、自宅か、どこかに移って、また入院まで診察を受けなければならない。その場合、病院の近くに、出来れば直結した賃貸住宅があれば、患者さんにはプラスだし、病院も患者を確保し、往診料(通院より割増)が入るわけである。
その業者さんは、某病院の裏にアパートを建てられる空き地があることに着目して、地主さんと掛け合い、実現させたのである。空き地に地主は20戸のアパートを建てると、病院の別会社に丸々借上げてもらい、病院からアパートへ患者を送り、医師の往診も病院とアパートの間に通路を設け、雪に触れないで行き来できるようになっているため好評で、安定した入居者確保を可能にしたのである。
医療テナントと合体
次は、医療テナント(6店)とワンルームマンション(39戸)を合わせもった『長谷川メディカルプラザ富岡』(所在地:横浜市富岡)。 当社が企画し、現在、管理運営している物件である。オーナーはスーパーマーケットを火災で焼失し、その跡地に「地域住民に喜んでもらう、そして、一人娘が将来お金に困らないように」この2つの条件に合う建物を、と依頼してきた。当初は、診療所と高齢者専用の賃貸住宅をセットした建物にする計画であったが、その地域周辺のニーズ調査をしたところ、若い人が多く、入居者を高齢者に絞らないで誰でも入居できる一般のワンルームマンションタイプ(賃料62,000円)と、診療所のセットに変更した。オーナーにとっては、高齢者専用住宅にすれば、国から8,000万円の補助金を得られたが、当社は「部屋を満室にするには高齢者専用では難しい、また高齢者は自分を高齢者と思いたくないものですよ」と、オーナーに納得してもらった。
建物は2棟で、歯科や内科などの医療テナントが入っている前部の医療棟と後部の住宅棟とが通路でつながり、このあたりは、前記の「病院とアパートがつながっている」発想である。また、建物は、床が2層構造で、下の層に雨水などが貯まるようになり(排水可能)、通路は地震の影響を緩和させるために、2つの建物より先に壊れるようになっているのが特徴だ。また、とくに建物の外観、デザイン(アメリカではデザインが悪いと銀行の融資が受けられないという)に趣向を凝らした物件である。道路に面した前部の建物はシンメトリー(中心から両サイドが同じデザイン)で外観は古典的な落ち着いた茶系にし、中央の位置に医療テナントの各看板、その上に大きくて丸い時計台を設け、見た目でも周囲の建物との差別化を図っている。また、この建物は、雑居ビルで届けているため、将来のニーズの変更にも対応できるようになっている。
この建物の敷地は、当初計画では、道路に面した医療棟部分の約250坪(スーパーマーケット跡地)であったが、後から、その裏側の300坪の借地権付き土地を買い取って、総敷地550坪の大型物件となった。オーナーの投資額は約9億円、銀行借入金のうち3億5千万円を15年返済、4億円を25年返済と2つに分けた。理由はオーナーの条件の1つであった「娘さんのために、15年後に返済を終えるように配慮した」わけである。ちなみに、この投資物件から得られるオーナーの年間キャッシュフローは1,500万円で、15年分のローン返済後の娘さんには年間4,800万円入ることになる。他に、この物件の特長は、前述したが@建物が100年持つ耐震性(地すべり方式)に優れていること、A35年間はメンテナンスフリー、B医療テナントの賃料は一定で15年契約、C管理運営を担うCFネッツの収益は家賃収入を基準とするのではなく、建物全体から上がる収益の7%となっていることである。
現在、医療テナントは5つ埋まり、1つ余裕がある。これはオーナーの要請で、レーザー治療できる眼科を募集中とのこと。私としては、建物の収益構造を高めるために、夏にはビアガーデンなどが開けるように、屋上のスペース貸しを考えている。
アパートに時計台設置
横浜の『メディカルプラザ』に時計台をつけた奇抜なアイデアを、愛媛県松山市の業者さんが着目し、自社所有の新築アパートにも時計台を設置した。この建物は駐車場の半分を借地して建てたもの。駐車場のオーナーは、車30台分おけるスペースに対し、10台分しか埋まらないこともあり、「この時期にアパートを建てるのはコワイ」と、アパート建設にも消極的だった。そこで、その業者さんが宣伝効果を考えた末、看板を見てもらうために目立つものとして、時計台のアイデアを取り入れたのである。そのアパートは1階がコンビニで上階がワンルーム5室(1室をマンスリー用)と小規模で建物も地味であったが、「時計台(裏側にも設置)のついているアパート」ということで、地元ではちょっとした有名な建物になり、予想した賃料(4万円)より高く、早い時期に満室となった。その業者さんは、すでに10戸規模の地元第2弾「時計台付きアパート」を計画している。
また、都市圏では珍しくないデザインが、地方圏では浸透していなく、斬新に映ってアピールするケースもある。岐阜のデベロッパーの話で、その会社は技術力に優れているものの、なぜか商品の売れ行きが悪く、私がコンサルティングしたことがあった。さっそく商品の1つである5階建て鉄筋造りの賃貸マンションを見せてもらった。一見、そのマンションは昔ながらのデザイン、そして建物構造をみても、都市圏のマンションでは当たり前になっているエントランスのスペースはなく、階段も外階段だった。私は「これでは、マンションとは呼べない」と指摘した。そして、新しく賃貸マンションを建設する計画が持ち上がった際、私は指摘したことに基づいて、3階建ファミリータイプマンション(38戸)を企画設計(設計は外部)した。オートロック、内階段、エントランスの入り口正面には目立つように絵画を飾った。これはアメリカ式のサービス力を発揮した企画とは言えないが、お客さんの反応は上々ですぐに満室になった。地方圏ではこのような当たり前の企画が商品企画に有効になるということだ。
フロント付きで女性に人気
次の成功事例は、ホテルタイプの高級感を持たせた『KYTビルディング=マンスリーネット杉田』、当社が企画し、管理運営している物件だ。JR新杉田駅より徒歩3分、国道16号線を走って行くとバスの前方に、カーキ色の6階建てビルの屋上に藍色をベースにした‘月極倶楽部’の大きな看板がいや応なく目に入ってくる。この建物の投資家は、同物件地の土地オーナー。このオーナーは、3億5千万円かけてKYTビルを建てるのと一緒に、別の350坪の敷地に建っていた自宅を壊し、新たに7千万円で自宅を建てた。この新築と合わせた、総投資額4億5千万円を銀行は丸々融資したというから、やはり、アメリカと異なり、日本では土地は強い。
このビルは当初、前述のような『病院とタイアップ』した2DKタイプの賃貸マンションを計画したが、国道沿いということで、車の騒音が予測した以上にひどく断念し、ワンルールタイプに変更、また全40室のうち16戸をマンスリーに、残りの部屋を一般の賃貸マンションとした。セールスポイントは、ホテル並のフロントサービスを付加したこと。フロントには夜11時まで係員が常駐し、女性でも安心して住める。フロント係はビル1階にテナントとして入っている当社の社員が担当し、その店舗からフロントは建物内で通じている。また中の廊下幅は1・8メートルと広いこと。これは将来、全室を病院に貸した場合、車椅子で双方通行できるようにしたためである。
ビジネスホテルが大変身
アメリカの『家具付き』賃貸住宅サービスを取り入れた、代表的な日本版商品がマンスリー・マンションである。
当社が企画し、管理運営するマンスリーマンション第1号が「月極倶楽部浅草」(87室。東京都墨田区)。同物件は、今年で営業5年目。長引いた不況の影響もあり、ホテル業はシティホテルの宿泊料金が下落、低料金を売り物にしていたビジネスホテルへと波及し、過当競争に入ったが、その中で敗退したビジネスホテルを、マンスリーに切り換えて成功した物件だ。投資家は横浜市に住み、当社が管理するアパートのオーナーである地主。投資額はリフォーム費用等含め3億6千万円、その地主さんにとっても初めての大型投資であったが、現在、金融機関の担保評価は5億7千万円で、物件評価だけでも70%の投資効率の良さ。経営システムについては、オーナーは、管理運営に伴うコストは一切かからず(固定資産税等は除く)、運用利回りも13%から14%を保証されている。部屋の稼働率は平均97%で文句なし。当社は、オーナーから一室4万円で借上げ、マンスリー料金約13万円(シーズンオフのサービス期間は8万円)で貸し出しているから、オーナーにとっても管理運営する当社にとっても最良の投資物件となっている。
とはいっても、ビジネスホテルの未稼動期間が6年もあり、リスクも大きかった。実際、開業当初はお客サンが少なく、今後どうなるかと心配したこともあった。また、ここがビジネスホテルではなくワンルームマンションの集合体であったら、他の人に買われていたと予測された。アメリカ仕込みのマンスリー専用に切り換えた理由をまとめると、@ホテルのようにフロント機能がいらないなど、人件費、管理運営コスト、メンテナンスが安いA賃料を稼働率によって、変えることができ、稼働率を高く維持できる(賃貸住宅契約の場合は2年間上げ下げできない)。Bリネンなどは入居したそのまま、退去まで(新しいのに変える場合は有料(1,000円)で自分で替えることになっている)。C光熱費は実費(定額制のところもある)。D前払い制(カード式)で滞納や未払いのリスクがない。そしてDマンスリーの立地条件は、山の手線の駅から10分以内の立地であること。このD番目の理由に付いては、ワンルームマンションに投資する場合にも、この条件は外せない。
社員寮をマンスリーで開花
『横浜コミュニティ』(横浜市緑区)は、一部上場企業の社員寮(45室)をマンスリーマンションに切り換え、成功した物件だ。
社員寮のオーナーは、その企業と30年借上げるという契約を交わした上で、建設資金として銀行から30年の融資を受けていた。しかしながら、不景気のため15年で途中解約され、困り果てて、買い手を探していた。しかし、建物の解体費用が5,000万円以上かかるとあって、買い手がつかず、当社に持ちこまれてきた案件だ。物件自体は、さきほどの「月極倶楽部浅草」同様に大型で、ワンルームマンションであったら借上げされていただろうし、更地なら、マンションデベロッパーが競っても購入したくなる物件だ。当社としては、始め、オーナーに対し「全室にユニットバスを設置」するならば借上げることを提示した。しかし、これも設置費用が約5,000万円かかるとあって、受け入れられず、オーナーからは「誰かに売ってほしい」と、売却を依頼された。そこで、当社は、物件近くで153室の寮を所有するクライアントの地主にマンスリー用投資物件として紹介、最終的に、承諾を得た。投資金額は、ユニットバス代含め2億7千万円、銀行融資が2億2千万円、自己資金が5千万円。当社が借上げ、管理運営することになった。
この物件の特長は、もと寮ということで、広い食堂があり、そこをアメリカ式に共用のリビングスペースとして開放し、ソファをはじめテレビやパソコン(2台)を置き、自由に利用できること。加え、キッチンスペースも大型冷蔵庫以外は自由に使え、自炊できるようになっている。リビングスペースで入居者同士が親しくなり、一緒に料理を作ったり、お酒を飲んだりして、コミュニティの場として重宝がられている。また入居者の半数近くが留学生などの外人が占め、入居者に合わせて受付フロントは外人、そのため、英語が日常会話で用いられるため、日本人にとっては英会話の勉強の場にもなっている。また寮ならばの大浴場があることで、サービスで『銭湯の日』を設けようと企画したことがあった。しかし、外人が多く、また今の若い人はユニットバスで十分のようで、喜ばれなったため、現在、大浴場をアスレチック場に衣替えすることを考案中である。賃料は88,000円(借上げ料は38,000円)、年間契約で月68,000円。当初は稼働率90%を超えていたが、大手電気メーカーの社員22人が一挙に退去したため、目下(7月時点)18室空いているが、稼働率55%が収益分岐点であるため、採算的には心配はない。
PART4 周辺情報テーマ決め、土地有効活用
周辺に集客ヒントが一杯!
今後、土地有効活用また賃貸住宅経営をとりまく環境はますます厳しくなることが予想される。先ほども触れたが、成功するのか、しないのかは、その土地の周辺情報に大きなヒントがあるとみている。
以前、横浜市のアパートオーナーに「子供一人に付き賃料1,000円引きにしたら」という奇策を提案し、実践したことがあった。14戸(2棟)のうち4戸が空いたままになっている物件の空室対策だった。まず外壁をキレイにしたり、物干し場所を設けたり工夫をこらしたが、キーポイントと考えたことは家主が、そのアパートの裏手で開園している幼稚園のオーナーであることだった。入居者を増やすことと、幼稚園児を確保することと結びつけたわけである。その結果、空室だった4戸のうち3戸が小さな子供のいる家庭であった。一応成功したわけである。
また当然のことだが、女性は賃貸住宅で1階に住むことを嫌う。理由は防犯上の問題もあるが、下着ドローボーに対する警戒心である。今日、ドアにはチェーン付きロックというより、テレビモニター付きインターホーンは当たり前の時代になるだろう。
とにかく、賃貸住宅が成功するのかどうかのキーポイントは、その物件に集客力があるかどうか。これはアメリカでも日本でも同じだが、まだ日本ではアメリカのように管理会社やCPMなどに任せっきりというわけにはいかない。土地の有効利用の段階から、オーナーと不動産業者がパートナーシップをもって、何をテーマにした物件にするか、そして、何をアピールするかをよく考えることである。とくに、オーナーは物件の周辺情報は的確に、近くにコンビニや学校、市営プール等々、プラス面をどんどん業者に知らせること。一般的に、客付け業者は印象のない物件は後回しにするものである。
また、繰り返すが、土地の有効活用で大事なことは、@まず資産の組み合わせを考え、投資効率のよい物件を追求する。自用地を他の土地にシフトすることを臨機応変に行なうこと。A建物は第一にデザインで集客力をつける。B賃貸住宅なら、なるべく長く住んでもらう工夫、サービスを考える、とともにメンテをきちんとやる。C空いたら、すぐに次が決まるように、ストックを確保しておく。たとえば、物件ごとに補充できるように、物件看板には物件名とともに連絡先を書き込んでおく。Dインターネットのホームページを活用する。業者は登録物件情報など、どの検索サイトからでも上位にくるように努めるとともに、オーナーはHPランク上位の業者と付き合うようにすること、などが挙げられる。
これからはテレビ付き風呂場!?
プライベートのことで恐縮するが、私の家の風呂場には、テレビモニターが付いている。帰宅して、冷えたビールをお盆に載せて、風呂に入り,ゆったりした気分でビールを飲み、テレビを見ながら風呂に入るのが大きな楽しみになっている。この楽しみを止められないでいる。私と同じ様な楽しみを味わっている人もいると思う。今後、このテレビ付風呂場をセールスポイントにする賃貸住宅が増えてくるのではないだろうか。 |